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「じゃ、朝ご飯食べに行こうぜ。
早く行かないとまた戀華に怒られる」
クロは照れ臭そうに頬を掻きながら襖を開け、中庭を囲むようにして伸びている渡り廊下に出る。
「ふふ、そうですね。
急ぎましょう」
そんなクロの姿に笑みを浮かべつつも、リリスはクロに続いて襖を潜る。
二人は渡り廊下をひたすら真っすぐ歩き、やがてきらびやかな装飾の施された扉の前で止まった。
純和風の屋敷に西洋の教会を思わせる扉、厳格な雰囲気の漂うこの屋敷も、ここだけはまた違う意味で圧倒されるだろう。
何処か、世界の境界線にいるような……この扉を潜れば異世界が広がっているかのような錯覚に捕われる。
そのせいか、この場所はこの屋敷の住人から余り好かれていない。
この二人も例外ではなく、特にリリスはこの扉を毛嫌いしている。
「んーー……やっぱり、この扉……まぁ中の部屋もだけど、どうしても好きになれんな」
クロは暫く扉を睨みつけると、ポツリと呟く。
リリスはクロが睨んでいる間、心配そうにそれを見ていたが、その言葉を聞くと嬉しそうに微笑んだ。
クロはそんなリリスに首を傾げつつも扉を開ける。
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