序章 平和な時間

6/11

44人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「じゃ、朝ご飯食べに行こうぜ。 早く行かないとまた戀華(レンカ)に怒られる」 クロは照れ臭そうに頬を掻きながら襖を開け、中庭を囲むようにして伸びている渡り廊下に出る。 「ふふ、そうですね。 急ぎましょう」 そんなクロの姿に笑みを浮かべつつも、リリスはクロに続いて襖を潜る。 二人は渡り廊下をひたすら真っすぐ歩き、やがてきらびやかな装飾の施された扉の前で止まった。 純和風の屋敷に西洋の教会を思わせる扉、厳格な雰囲気の漂うこの屋敷も、ここだけはまた違う意味で圧倒されるだろう。 何処か、世界の境界線にいるような……この扉を潜れば異世界が広がっているかのような錯覚に捕われる。 そのせいか、この場所はこの屋敷の住人から余り好かれていない。 この二人も例外ではなく、特にリリスはこの扉を毛嫌いしている。 「んーー……やっぱり、この扉……まぁ中の部屋もだけど、どうしても好きになれんな」 クロは暫く扉を睨みつけると、ポツリと呟く。 リリスはクロが睨んでいる間、心配そうにそれを見ていたが、その言葉を聞くと嬉しそうに微笑んだ。 クロはそんなリリスに首を傾げつつも扉を開ける。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加