チョコレートスニーカー

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カーテンを閉め切ったあたしの部屋はうす暗く、よどんでいる。 椅子に掛けてあったパーカーを羽織って、窓に近付き、それを開ける。 まず柔らかな光が、うす暗かった部屋の中全体に差し込まれた。 カーテンに付いていた埃がきらきらと舞ったので、それからあたしは窓も開いた。 ひゅうと入り込む空気があたしのほっぺたを冷やして、そして部屋を清浄にしてくれる。 乾いた空気にはまだ少し、冬っぽさが感じられた。 窓から覗いて右下に目をやると、うすく染まり出した桜の木が目に入る。 もう春なんだよね、と、あたしは半ば無意識に納得する。 去年、害虫がつくからとかなんとかで、切り倒されそうになった桜の木。 来年はあたしの卒業だからと、切り倒すのを見送られた桜の木。 ーーキミ、あたしのおかげで命拾いしたんだよね。 来年、あたしが実家に何度目か帰ってくる頃、この桜の木はなくなっているのかな。 高校の入学式、中学の卒業式、運命のクラス分けの朝、入学式、小学校の卒業式、あの子の引っ越し、初めての入学式……そして今日。 あたしがランドセルを買ってもらうよりも前からここに、あったんだもんね。 今朝は風もなくて、海も凪いでて、青い空は高い。 大きな欠伸を右手で隠せば、左目から一粒だけ涙が流れたけど、そのことはあたしを さほど揺らすことも無い。
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