チョコレートスニーカー

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2月14日。 ーー雪が降るなんて、予想外。 だけど、悪くない。 あたしはこの日とうとう、胸に積もった気持ちを解放してあげようと決意していた。 自己完結が得意な自分とさよならする良い機会なんだと、自分自身に言い聞かせた。 何度も味見をした手作りのチョコレートは、気持ちごと甘く溶かして固めた最高傑作。 包装は、凝る時間がなくなってしまって、だから正直、あんまり可愛いとは言えない。 「甘いもの苦手だったよね、だからクッキー焼いてきたの」 彼の彼女は完璧な女の子。 適うはずがないのは解っていたのに。 当日こんな台詞を耳にしただけで、こんなにも心は怖じ気づいてしまうものなんだ。 「これ、余ったからあげる」 結局、あんなに一生懸命作ったチョコレートは義理チョコとして処理された。 なんて冷たい、あたしの心。 しかし後から考えてみれば、彼の「ありがとう」という言葉が聞けただけでも、あたしにとってみれば上出来だったに違いない。 雪じゃなくて、雨なら良かったのに。 言えなかった台詞が胸の奥底に降り積もり、 凍えて、 時が経ち、 溶けたなら、 あたしはもうあたしでいられる自信がなかった。
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