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僕が彼女に出会ったのは、
みぞれまじりの冷たい雨が、冬のはじまりを告げている日だった。
僕は、普段会社に遅刻するくらい低血圧だが、その日はひさしぶりの休みではりきって早起きしたものの、することもなく家でくすぶっていた。
僕の住んでいる町は
「ど」
が付くほどではないが田舎で、僕の父が子供だった頃は九州でも有数の石炭の採掘地だったらしい。
映画館がいくつもあり賑わいを見せていたみたいだが、僕が子供の頃には映画館も一つしかなく、その映画館も今はもうなくなってしまった。
いまこの町のシンボルは、昔は誇らしく立っていたであろう炭坑の
「二本の煙突」
と、今なおセメントの採掘をして痩せ衰えていく
「山」
だけである。
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