Prologue

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 気が付くといつの間にか雨が降り出していた。    私はそれまで目を通していたノートを閉じ息を小さく吐く。  まるでなんの変哲もない只の古びたノート。やや色が褪せた碧い表紙の隅には薄く細い筆跡で『6ーD 川人 南智』と記されている。    このノートこそ始まり、そして終わりだと誰が気付いただろう。    すっかり冷めてしまった珈琲を啜り、私は再びノートの1頁をめくった。    ふわりと漂う甘い香り。  彼の同居人の香水だ。    川人南智と彼。  二人の奇妙な出会い。  物語はそこから動き出す。    少し退屈で歪んだ優しい物語が。  
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