橋の下

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「早く会いたいなぁ…」 今日も、唯一飼い主を見る事が出来る泉を覗き込みながら一匹の犬がポツリと呟きました。 クリーム色の体に垂れた大きな耳。 フワフワの尻尾を振りながら嬉しそうに、愛しそうに飼い主を見ています。 名前はハナ。 今見ている大好きな飼い主が付けてくれた名前です。 ハナは待っているのです。 自分を愛し抜いてくれた大好きな飼い主が、幸せな一生を終えて一緒に天国に行ける日を―… 最期に交した約束が果たされる時を。 「毎日見てて良く飽きないねっ!!」 ふいに意地悪そうな、いじけ声が聞こえて来ました。 声の方を見れば、立ち耳でキリッとした顔立ちの真っ黒な犬が睨む様にこちらを見ていました。 「クロちゃん!!飽きないよ、大好きな人だからね!!」 ハナは、ニッコリとクロに微笑みかけました。 「クロちゃんには、会いたい人はいないの?」 「いるわけないじゃん、人間なんか…大嫌いだ…」 ・
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