花火。

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-そういえば暫くぶりだ。 右手に抱いていた、チラシの折込まれた新聞やらダイレクトメールやらをリビングルームの机に乱雑に置くと、 左手に摘んだ小さな葉書一枚に向けられた視線をそのままにふと思った。 以前は何時だったか…思い出そうとするが、一瞬その時の情景が浮かんだかと思うと直ぐにゆらゆらと頼りなく消えてしまう。 自身の記憶の曖昧さ、当時の注意力のなさを暫し怨んだ。 「…ゆぅみ!」 葉書から目を上げると、奥の部屋でなにやら真剣に積み木を積み上げるあたしの娘の後ろ姿が見え、声をかけた。 自分を呼ぶ声に振り返った娘、ゆぅみは、肩を少し超えたくらいのオレンジ色をした細い髪から銀狼の耳を覗かせる、 生まれて3・4年の幼女であるが、その金の眼は、母親であるはずのあたしに似ず何処かぼんやりとしている。
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