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「今晩ね、近所で花火大会があるんだって。…行く?」
左手の葉書がそれを指していることを示すようにあたしの顔の横でそれを振る。
娘は暫くして、ゆっくり持ち上げていた積み木を下ろし手を離すと、またあたしのほうを向き直り、言った。
「はなび、たいかい?それって…
どんな、かくとうぎ?」
「…」
一瞬肩透しを喰らいそうになったが、ぼんやりとしていても真剣なその眼で首を傾げる娘を見て、
なんとか彼女の持つ疑問を再確認した。
「花火は…格闘技じゃあなくって……えぇっと」
どうにかしてそれがどういうものだったのか記憶を掘り起こそうとしたが、
なにぶん、さっきまで以前何処で誰と見たのか思い出せずに苦しんでいた身。
生まれて初めてそれを見たときの強く残った印象だけでも思い出せただけ立派である。
「…大砲、みたいなものかな」
「たいほぅたいかぃ?」
「うん…大砲大会」
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