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青年は男が隠れている壁を睨み付けた。青年の眼差しは壁に隠れた男の鼓動を止めた心臓を貫くように鋭い。しかし、男にはそんなことよりも青年がヴァンパイアクイーンの名を口にしたことが驚きだった。
「キサマ……どうしてその名を?」
「どうして?お前……人狼は初めてか?」
人狼の名を聞いた瞬間、吸血鬼の男は戦闘体制に入り、壁から飛び出した。牙を剥き、皮手袋を貫いて鋭い爪が生えた。
「やめておけ」
襲い掛かる吸血鬼に向かって人狼の青年は呆れた様子で吐き捨てた。しかし、男は構わず襲い掛かる。
青年は小さくため息をついた。
次の瞬間、吸血鬼は吹き飛ばされ瓦礫の山に埋もれた。あまりの速さで吸血鬼にも何が起こったかわからない。この時、青年は近づいてくる吸血鬼を殴り飛ばしていたのだ。
青年は瓦礫の山に歩み寄り中から吸血鬼の男を引きずり出した。まだ息をしている。吸血鬼の治癒能力が男を生かしている。だが、しばらくは動けないだろう。
「ヴァンパイアクイーンに会ったら伝えろ。『次の満月の夜。“白銀王”が橋の上で待つ。決着をつけよう』」
白銀王と名乗る人狼はそれ以上何も言わずにその場を立ち去った。
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