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リュートは、一つ溜め息を吐いた。
「約束も何もあったモンじゃねーな……」
言って自嘲気味に、乾いた笑いを漏らす。
閉じた目蓋の裏に写る、ユキの姿。
「ごめんな………けど……死なせやしねぇ……絶対に!」
開いたリュートの瞳に宿る、強い決意の光。
強光を帯びる砲門に、白銀の機体は突撃した。
『消滅の光』が、照射される。
誰もが死を予感する。
そして―
ゴァアアアア!!
凄まじい光が、辺り一帯を覆う。
連なる轟音と衝撃波。
数秒の後、敵・味方両軍が眼にしたのは、爆散し、墜ちていく要塞の様だった。
地に落下した巨大要塞が、激しい爆発を伴って焼失していく。
皆が確信する。
撤退を開始した敵軍に、戦争の終結を………
ラスティは、眼を伏せた。
他のクルー達も、悲痛な面持ちで、一言もなく俯いている。
ユキは、フラフラと立ち上がり、要塞が黒煙を上げる様を写すメインスクリーンに歩み寄る。
「そんな………嘘…」
呆然と呟く。
「嫌ぁああああ!!」
ユキは、自分の両肩を抱き締めて泣き崩れた。
リュートは、エネルギーの充填された砲門に、自機を突撃させる事によって、『消滅の光』を暴発させたのだった。
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