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行き場を失ったエネルギーは、要塞の心臓部に達し、誘爆を促した。
「馬鹿野郎が!」
男性オペレーターが、卓盤を殴り付ける。
「おまえが犠牲になったって、何も……!」
戦況を把握しているブリッジ要員には、勝賛の声をあげる事が出来なかった。
ふと、オペレーターの一人が気付く。
艦から約2000の距離から発られる、救難信号に。
気が乗らないながらも、パネルのキーを操作し
「!?」
眼を見開く。
その識別コードに。
「救難信号あり!識別コード、リュートのモノです!!」
報告に、ユキが、ラスティが、ブリッジのクルー全員が顔を上げる。
そして―
「こちらリュート=ライアス中尉!……聞こえますか?グラディウス」
入ったリュートの通信に、今度こそ、皆が思わずシートから立ち上がり、喜びに打ち震える。
「リュート…リュートぉ……」
涙を変え、安堵に座り込んだユキの肩に、ラスティは、ポンと手をやったのだった。
リュートは、パラシュートで地に降り立った。
砲門に突撃するあの瞬間、緊急脱出システムによって、リュートは機体の外に投げ出された。
リュートに、そんな操作をした覚えはない。
誤作動―
そう片付けてしまうにはあまりにも………
リュートは、陥落した要塞に向け、敬礼をしたのだった。
「ありがとな……マヴェリック…」
数ヶ月後―
ラスティの自室の机に置かれた一枚の写真。
グラディウスのクルーに祝福され、純白のウェディング・ドレスに身を包んだユキと、照れ臭そうにはにかみ笑う、タキシードを着こなしたリュートのウェディング―
~fin~
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