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｢必ず…帰って来て…｣
両手を胸の前で握りしめ、ユキ＝レスティア伍長は瞳を潤ませてか細く呟いた。
セミロングの黒髪に、縁無しの眼鏡の、やや幼さを残す顔立ちの、この艦の女性オペレーター。
いつもは勝ち気な彼女の見せる、その弱々しい仕草に、リュート＝ライアス中尉は数秒の後―
｢あ……｣
ユキを優しく引き寄せて抱き締めた。
｢ん………｣
見上げるその唇に、自分の唇を重ねる。
互いに眼を閉じて、鼓動を確かめ合う。
……このまま、時がとまればいいのに……
願っても叶わぬ思いがユキの、そしてリュートの胸に広がる。
時の静止を願い、思わせて―
静かに、二人の唇が離れる。
｢約束する…俺は必ず帰って来るさ…おまえの所へ｣
｢うん………｣
俯くユキを再度優しく抱き締めて、その身を離し、穏やかに微笑みかけると、リュートは展望デッキを出て行った。
―『ディラント要塞攻略作戦』―
国境山間部に設けられたイスラエル軍の巨大要塞。
本作戦は、この要塞を攻略し、イスラエル本国へと侵攻する作戦だった。
開戦から約三ヶ月。
アメリカ連合軍は、その圧倒的な物量を持ってイスラエル軍を本土まで追いやった。
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