6人が本棚に入れています
本棚に追加
実習室に入り、まず一つ驚く。
水浸しになったであろう床は綺麗に拭かれ、椅子や机の位置も元通り。
おまけに木の葉の燃えかすなども綺麗に掃除されていた。
「あの、先生。これは…」
「あぁ、片付けるついでに掃除しておいた。だが、まだ全部終わったわけじゃない」
葉子は実習室の隅から何かを持ち上げ、三人(というより、空)に投げつけた。
「バケツと…雑巾?」
「そこに焦げ付いた実習用具があるだろ?それを拭いておけ」
軽い。
実習の時の様子から考えればあまりにも軽すぎる。
「これだけ?ボクとしては、もう少し何かあるかと思ってたんだけど…」
「期待しておけ」
葉子は意味ありげにウインクすると、白衣を翻して実習室を出ていった。
残された三人にはバケツと雑巾だけが残され、しばらくは沈黙がその場を支配する。
「…ボクとしては、かなり怪しいと思うんだけど」
「何が思うだよ。全力で怪しいじゃねぇか」
当たり前な二人の会話。
彼女を知っている者ならば当然の事である。
【神谷葉子には諦めと疑いをもって接する】
それが、この学校に通うもの全員の心得なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!