第一章

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実習室に入り、まず一つ驚く。 水浸しになったであろう床は綺麗に拭かれ、椅子や机の位置も元通り。 おまけに木の葉の燃えかすなども綺麗に掃除されていた。   「あの、先生。これは…」   「あぁ、片付けるついでに掃除しておいた。だが、まだ全部終わったわけじゃない」   葉子は実習室の隅から何かを持ち上げ、三人(というより、空)に投げつけた。   「バケツと…雑巾?」   「そこに焦げ付いた実習用具があるだろ?それを拭いておけ」   軽い。 実習の時の様子から考えればあまりにも軽すぎる。   「これだけ?ボクとしては、もう少し何かあるかと思ってたんだけど…」   「期待しておけ」   葉子は意味ありげにウインクすると、白衣を翻して実習室を出ていった。 残された三人にはバケツと雑巾だけが残され、しばらくは沈黙がその場を支配する。   「…ボクとしては、かなり怪しいと思うんだけど」   「何が思うだよ。全力で怪しいじゃねぇか」   当たり前な二人の会話。 彼女を知っている者ならば当然の事である。   【神谷葉子には諦めと疑いをもって接する】   それが、この学校に通うもの全員の心得なのだ。
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