6人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
藍澤未咲(あいざわ みさき)は黒縁の眼鏡をくいっと上げ、柔らかい声でそう言った。
髪は茶色のロングだが、染めたわけではないらしい。
少し大人びた顔は綺麗に整い、優しげな笑みを浮かべている。
「委員長勇気あるねぇ。俺なんか今にも逃げたいくらいなのに」
「あはは、それボクも同感」
その後、大きなため息が二つ。
「でも行かなきゃいけないんですし、逃げたら何されるかわかりませんよ?」
状況は未咲の言う通りである。
授業をぶち壊した上、彼女からの呼び出しをサボったとあれば首の一つや二つ飛んでもおかしな事などない。
二人はそれを鮮明にイメージし、顔を見合わせた後に引きつった笑顔を作った。
「それじゃあ行きますか。下手すりゃホントに殺されかねない」
空は重い腰を上げ、澪もそれに続くように立ち上がる。
正直二人の顔は明るくないが、この状況で明るくなれという方が無茶である。
「ま、死なない事を祈るよ」
「縁起でもねぇ事言うなっての…」
「…はぁ」
最初のコメントを投稿しよう!