第一章

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研究室――正式には魔法実習準備室だが、神谷葉子がほぼ自室として使用しているためにそう呼ばれている。 彼女自身もその呼び名が気に入っているらしく、正式な名前など久しく聞いていない。   「ついに来ちまったな、研究室…」   三人の前には白く塗られた木製の扉。 普通ならばどうという事のない扉なのであろうが、彼らにとっては地獄への扉と等しいのかもしれない。   「空…、早く開けなよ」   「お願いします、空さん」   二人の少女からの言葉。 それは自分で扉を開けたくないというささやかな主張でもある。 もはや何度目か分からないため息を吐き、空は覚悟を決めて扉をノックした。   「失礼します」   勢いよく扉を開けた空。 だが、彼は部屋に入ることはしなかった。 否、入ることが出来なかった…と言ったほうが正しいのであろう。 中には資料や実験器具が散乱し、もはや人が踏み込む余地は無かったからだ。   「なぁ…、ここであってるよな?」   空の言葉を聞き、女子二人は首を縦に振ってそれを肯定する。 が、その時だった。   「お前達も入口から離れろ!巻き込まれるぞ!」   乱雑とした研究室の中から葉子は飛び出し、とっさに三人の腕を引いて扉から遠ざける。 それと同時に入口から紫色の煙を伴う爆風が飛び出した。
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