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研究室――正式には魔法実習準備室だが、神谷葉子がほぼ自室として使用しているためにそう呼ばれている。
彼女自身もその呼び名が気に入っているらしく、正式な名前など久しく聞いていない。
「ついに来ちまったな、研究室…」
三人の前には白く塗られた木製の扉。
普通ならばどうという事のない扉なのであろうが、彼らにとっては地獄への扉と等しいのかもしれない。
「空…、早く開けなよ」
「お願いします、空さん」
二人の少女からの言葉。
それは自分で扉を開けたくないというささやかな主張でもある。
もはや何度目か分からないため息を吐き、空は覚悟を決めて扉をノックした。
「失礼します」
勢いよく扉を開けた空。
だが、彼は部屋に入ることはしなかった。
否、入ることが出来なかった…と言ったほうが正しいのであろう。
中には資料や実験器具が散乱し、もはや人が踏み込む余地は無かったからだ。
「なぁ…、ここであってるよな?」
空の言葉を聞き、女子二人は首を縦に振ってそれを肯定する。
が、その時だった。
「お前達も入口から離れろ!巻き込まれるぞ!」
乱雑とした研究室の中から葉子は飛び出し、とっさに三人の腕を引いて扉から遠ざける。
それと同時に入口から紫色の煙を伴う爆風が飛び出した。
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