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声が聞こえる。
暗闇の中、心を震わせるような声。
それは私を嘲笑しているようにも、慈しんでいるようにも聞こえた。
「――ス」
誰かが私を呼んでいる。
「――リス」
――誰?
私を呼ぶのは一体誰――?
「アリス! いい加減に起きなさい!」
突然突き落とされるような大きな声で起こされ、私は一気に覚醒する。
目を開けると視界に入ってきたのは見知った天井で、顔を横に向けると起こり顔の姉がこちらを見下ろしていた。
「ね、姉さん、おはよう」
「おはよう、じゃないわよ。もうお昼よ? 休みだからって、いつまでもぐうたらしてるんじゃないの」
「う、 うるさいなぁ。いいじゃない。休みなんだから! そんなに大声で怒鳴らなくても聞こえてるわよ!」
あまりに姉が怒鳴るので、思わずカッとなってしまう。直ぐにこうして頭に血が昇りやすいには、私の悪い癖だ。
「――はあ、まったく。年頃の女の子が、休みの日に昼まで熟睡。そんなんじゃ恋人もできないわよ?」
姉は肩を落とし、大袈裟に頭を振ってわざとらしく嘆く。
「いや、恋人なんかいらないし。放っておいてよ! もう!」
そんな演技には騙されない。私は寝癖交じりの頭を掻きながら姉を睨みつける。
「我が妹ながら情けない。――まぁいいわ。私はこれから出かけるから、留守番よろしくね。サンドイッチ作っといたから、ちゃんと食べなさいよ」
姉はそう言って部屋から出ていった。
「――ていうか、そんな事を言う為に私を起こしたのかよ」
そんなのわざわざ起こして言わなくても自分で気付くし勝手に食べる。せっかくの休日の惰眠を邪魔された私は、一人ベッドの上で項垂れた。
「――ねむ」
二度寝するという選択肢も私にはあった。せっかく姉は出かけたのだ。今度こそ邪魔される事はない。しかし――。
「お腹すいた」
私の元気なお腹は私が起きた事を察すると盛大に腹の虫を鳴らして食事を要求してきた。三大欲求の一つに負けた私は起きてご飯を食べる事を決めた。
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