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「…くっ……」
魔王は、玉座の前に膝をつき苦しげな声を漏らす。
左手で抑えた右肩には裂傷がはしり、紫色の血が流れ出していた。
その姿をニヤニヤとした笑みを浮かべている人間の男――勇者キラの腕の中には、人間の女がいた。
気を失っているのか、はたまた魔法で眠らされているのか、ぐったりとして微動だにしない。
「人間というものが、こうも卑怯で傲慢な生き物だったとは……キャロは関係ないはずだ、離してやってくれないか?」
「ああ、離すぜ。お前が死んだ後にな!!」
そう言ってキラは女を抱えたまま、魔王に斬りかかった。
キラの後ろではもう一人の人間――賢者デューイが呪文の詠唱を初めている。
魔王は膝をついたまま、キラの攻撃を長く伸びた左手の爪で受け止め跳ね返すとそのまま爪をキラに向けた。
キラはニヤリと笑うと、女――キャロを自分の前に翳した。
「!!」
キャロに当たる寸前で止めたところに、キラの容赦ない膝げりが魔王の腹を抉った。
「ぐっ!」
魔王は背中から玉座にぶつかり、前のめりに倒れた。
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