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「……悪しき者を命尽きるまで焼き尽くせ、デスバーナー」
そこに詠唱の終わったデューイの魔法が魔王を襲った。
咄嗟に体制を整えると魔王は、自分の前に対魔バリアを発動させる――
はずだったが、キラがキャロの首筋に剣を押し付けるのを視界の隅で捉えた途端、発動しかけたバリアは消え、魔王はデスバーナーをまともに食らった。
燃え上がる黒い炎の中、魔王の瞳に映ったのは深々と剣で腹を貫かれたキャロの姿だった。
「キャロォォォ!!!」
命尽きるまで消える事のない黒炎の中、魔王の悲痛な叫び声が城中に響いた。
「……魔物は……貴様ら人間の方ではないか!!絶対に……絶対に……許さ…ぬ…ぞ――」
絶望と悲しみ、怒りや憤りのこもった魔王の瞳からは、真っ赤な涙がこぼれ落ち、やがて黒い炎に焼かれ、魔王の命は尽きた。
「キラ、何も殺すことはなかったんじゃないのか」
デューイがキラに歩み寄りながら、女の骸を見て言った。
「は?魔王の女だぜ?同じ人間の女とはいえ、生かしちゃおけねえだろ。しかし、魔王もあっけなかったな」
命が尽きたところで黒炎は消え去り、キラの足元には魂の抜けた魔王の骸が転がっていた。
それを足蹴にしながらキラが言った。
「外の方もあらかた片付いたようだし、さあ俺達の仕事は終わったぜ。後は、あの強欲国王から金を貰うだけだ」
キラは耳に手を添え、外から聞こえる殺戮の音が小さくなったのを確認した。
「では帰るとするか」
そう言ってデューイは詠唱を始める。
デューイの足元に魔法陣が浮かび上がった。
「……我は飛ぶ、テレポーション」
「うわっ!置いていくなよデューイ!」
キラが慌ててデューイのそばまで行くと同時に、二人の姿は消え去った。
後に残されたのは、魔王の骸と、その骸に向かって手を伸ばしたまま事切れた女の骸だけだった――。
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