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数百年前、攻め込んで来た人間達に魔王は敗れ、ほとんどの仲間は息絶え、土地も奪われた。
生き残った僅かな魔族達は、追い立てられるように海を渡った。
新天地での暮らしは楽ではなかったが、みんなで協力し助け合い、荒れた大地を開墾し、子孫を育み、今現在では平和で穏やかな暮らしを手に入れた。
部族間での争いは無く、お互いの欠点を補いながらひっそりと暮らしていた。
その中心部となる街――エルメディアでは、色んな種別の魔物達が暮らしている。
質素ながらも手入れの行き届いた民家や商店が立ち並び、街を歩く町民達の表情は皆、いきいきしている。
エルメディアの中心部から少し離れたところに、一際大きな建物がある。
その建物の一室。
一人の老人を中心に数人の魔物達が車座に座っていた。
「ほっほっ。皆も知っての通り、今年は赤の月じゃ。今回は何人だったかの」
「六人です。長老」
長老の右隣に座る狼の頭を持つ男が言った。
「いや、アヤツもだから七人だ」
今度は左隣に座る、見た目は人間に近いが、長く伸びた髪の横から長い耳を覗かせた男が言った。
「ほっほっ。シドや、アヤツとは誰じゃったかの」
紫色の小さい体の長老が、床まで届くほど長い白髭を撫でながら左隣の男――シドに訪ねた。
「ユーキの事です。長老」
長老の問いにシドは、ため息混りに答えた。
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