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「良かった。安心したわ」
「はあ? 何言ってんのあんた」
「だから安心したって言ったの。私にこんな事する理由がハッキリ分かったから」
「はあ? 訳分かんないこいつ」
苛立たしそうに睨み付けてくる6人に、里子は生まれて初めて冷笑を浮かべた。
「悔しいんでしょ? だって自分達がブスだと思ってる女に負けるほど、自分達は更に上行くドブスってことだもんね。しかもそのドブス達から嫌がらせを受けてるブスな女を、もしかしたら黒川くんは守ってるんじゃないかって悔しいのよ。そうなんでしょ? おまけに、本当は自分達がドブスだって事に気付いてるから、黒川くんに告白する勇気すらない。肝っ玉小さいくせに面子が揃えばハイエナ駆除? 暇がないなら駆除に時間かけずに盗られた獲物を取り返せば?」
息をつかずに一気にまくし立て、最後は端から順に、真っ向から全員と目を合わせた。
面食らったように里子を眺めていた6人の顔色が変わる。
気の毒なほど真っ赤に染まったと同時に、揃って掴みかかって来た。
1人が里子の右手を。
もう1人が左手を。
背後に回った1人は後ろから髪を引っ張り、里子の顔をやや斜め上に向かせる。
残り3人は前に立って、憤然と里子を直視した。
中央の1人がスカートのポケットに手を突っ込んだ。
出て来たその手に握られていたのは、不吉な光を放つ銀色のハサミだった。
里子はすぐに分かった。
今から自分に何が起こるか。
「せいぜい泣けよブス」
言うと、ニヤニヤ笑いながら里子の横髪をゆっくりいたぶるように持ち上げて、ハサミを入れた。
すぐ耳元で、嫌な音が鳴った。
それと同時に足元に落ちた塊。
切れ味の良さからハサミが散髪用だと分かるくらいの余裕は、辛うじて残されていた。
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