2.謎

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    しばらく書斎に沈黙が落ちた。 悠一はソファに深々と腰を落ち着け、昇の次の言葉をジッと待つ。 隣でペン先を止めたまま、伸一は2人の様子を見守った。 秒針が奏でる規則正しい音色が、沈黙に支配された書斎の重厚感を引き立てる。 窓から届く外界の喧騒も、秒針と同じ役割を果していた。 やがて悠一がのんびりコーヒーに手を伸ばしたその時だった。 事態は急変した。 昇の頭がガクンとうなだれた。 と同時に、身体がビクリと痙攣した。 悠一に緊張が走る。 鋭い眼光を昇に突き刺す。 ユラリ。 ユラリ。 釜をもたげるかのように上がった昇の顔が、悠一の正面で止まった。 『最初から頼んでない。要らぬ世話だ』 声色が変わっていた。 元の彼の頼りない声と、それに重なる野太い声。 その二つが音声多重になっていた。 悠一はとっさに腰を浮かせた。 座ったまま固まる伸一の前に徐々に体を移動する。 やがてすっぽり弟を覆い隠す位置で立ちはだかり、『三笠昇』を見据えた。
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