2.謎

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  朝から悠一は憂鬱だった。 何の因果かこんな姿で生を受け、反れることなく成長し、そして気が付けば、周りに『麗人』と呼ばれるようになっていた。 自分の一挙手一投足が、時に一方的な『期待』と『誤解』を植え付ける現実に、ある意味恐怖さえ覚えたこともある。 17年も生きていればパターンも覚え、それを避けるための言動が、いつしか自分を冷徹男と呼ばしめる原因となっていた。 後悔した事は一度もない。 むしろ静かな環境が自分に合い、今では面倒ないざこざから身を守る格好の楯だと思っている。 ―昨日の一件から夜が明けた今朝、一緒に登校した別れ際に、伸一の口が忙しく開閉した。 『兄貴、昇さんの変貌のこと、三笠先輩にちゃんと説明しろよ? ついでに三笠先輩自身の様子も要チェックな? 依頼はウチじゃなくて、除霊関係の権威に頼んで、えーっとそれからそれからやーーんっ』 『分かってる。あれで日常送ってる方がおかしいからな』 頭を抱えて悲鳴を上げる弟に蔑んだ一瞥をくれて、結局名残惜しそうに校舎へ去って行く背中に右手を上げたのだが。 さて、一体どうやって三笠を呼び出そう。 他の生徒の面前で自分が呼び出せば、必ず噂になる。 かといって他人を介せば、あらぬ憶測がよりいっそう強大な噂を作り出す。 ああもう頭が痛い。 なんで相手が女子なんだ? 1限目の現代文までの僅かな休み時間を、こうして思案に利用すべきか悩んでいたら、突然誰かに背中をつつかれた。 無言で振り返ると、知らない男子生徒が立っていた。 「……何奴?」 「里子の幼なじみ。これ渡せって」 無愛想に右手を伸ばし、折り畳まれた紙切れを突き出す。 悠一は受け取る前に首を傾げた。 「サトコとは?」 途端に男子生徒の表情が一変した。  
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