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翌朝。
教室に一歩足を踏み入れた悠一は、突然横から誰かに胸ぐらを掴まれた。
それを目撃した教室内の女子から、俄に悲鳴が上がった。
「うっせーブス共っ!!」
辺りを見回してそう怒鳴ったその学生は、力任せに悠一を教室の外へ引っ張り出した。
「ああ、昨日の」
乱暴に扱われながらも、相手に見覚えがある事を確認する。
以前の乱暴ぶりから察するに、この行動も気質から来てるな。
そう頷いてから、悠一は彼の手を振り解いた。
「素敵な挨拶だな。何か用か?」
振り解かれた右手を再び伸ばしながら、男子生徒は悠一を睨み付けた。
「しらばっくれんじゃねーよ! お前昨日里子に何したんだよ!」
その手をかわし、悠一は再び首を傾げる。
「はて。サトコとはどちらさん……」
「てっめーっ!!」
鬼とみまごう剣幕で怒鳴り、一度かわされた右手で再び悠一の胸ぐらを捉えた。
「お前と会う約束してたんだろうが! 白々しいこと言ってんじゃねーよ!」
ああ、思い出した。
『ミカササトコ』。
ということは……。
悠一は彼の右手を素早く掴み上げると、瞬時に背中に捻りあげて動きを制した。
グッと顔に顔を寄せる。
「あいつに何かあったのか?」
「お前がっ、里子をあいつ呼ばわりすんなっ」
一瞬で形勢を逆転された展開に、学生の表情に動揺と驚愕の色が乗る。
右腕の痛みに顔をしかめながら、それでも悠一を睨み付けるも、悠一の眼光はまるでそれを吸収した。
「あいつに何かあったのか?」
「………くっ」
腕が軋んだ。
顔が激しく歪む。
やがて呻き声が漏れた。
悠一はようやく手を解く。
男子生徒は慌てて一歩後ずさった。
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