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肩で激しく呼吸しながら、吐き捨てるように言った。
「怪我してんだよ。左手に包帯巻いてる」
「理由は?」
「知らねえ。俺はてっきりお前にやられたんだと思って、里子に聞かずにこっちに来た」
短気なやつだ。さては三笠に惚れてるな?
などとは口にせず、無言で鞄を教室の隅に投げ置き、壁の時計に目をやった。
あと15分でSHR。
素早く廊下に舞い戻り、立ち尽くす男子生徒に尋ねた。
「三笠のクラスは?」
「……B」
なんだ、隣か。
そんなことすら知らない自分に、今更ながら感心してしまう。
「……あ、それと、あんたどちらさん?」
「……原田。原田学」
無愛想だが素直に答える。
あからさまに横を向き、悠一と視線を合わせることを避けていた。
まるで拗ねた小学生のような態度に、悠一は一瞥をくれただけで、真っ直ぐ正面を見据えた。
黙って学の脇を通り過ぎ、隣のクラスに歩を進めた。
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