2258人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
「今回は俺1人じゃないから安心しろ。伸一も呼んである」
「……安心とか、そんなバカな……。2人きりかと思ったのに……」
弟くんに何かトラブル発生しないかしら。
斜め下を向いてブツブツ呟く。
「お前今しれっと俺の弟の不幸を望まなかったか?」
「 不幸だなんて。ほんの些細なトラブルよ。お腹下すとか、先生に急用を託されるとか
、そんな小規模なアクシデントよ」
人差し指を顎に当て、聞かれもしない具体的内容まで答える里子である。
こいつの天然ぶりはもはや決定的だな。
そう呆れながらも、悠一は肩の力が抜ける安堵を覚えた。
それは近年感じたことのない、形容し難い感覚だった。
6限目終了のチャイムと同時に、悠一は真っ直ぐ生徒会室へ向かった。
北校舎に踏み入れた途端、周囲の喧騒が嘘のようにパッタリ途絶える。
その対比はあまりに見事で、むしろ幻想的でさえあった。
2階に歩を進め、ここ最近通い慣れた一番奥の生徒会室に辿り着く。
中では既に里子と伸一が待っていた。
「お前ら随分早いな」
「だって一刻も早く黒川くんに会いたかったんだもん」
「俺も同じ!」
「冗談はよしてくれ」
前者はともかく、弟のセリフに全身が粟立つ悠一である。
これ以上言及しないことにして、用意されたパイプ椅子に座わった。
最初のコメントを投稿しよう!