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里子の話を聞き終えた兄弟は、顔を見合わせて落胆の色を表情にのせた。
「……てことは」
「説得どころか、門前払いって訳だな」
「その通りです……」
パイプ椅子でうなだれる里子をよそに、悠一はいつものように右手を顎に添えて黙り込んだ。
「……ホント言うと私は、まだ半信半疑だったのよね。いくら黒川くんの話聞いても、まさかそんな事があるわけないって」
「それはよく分かるけど、でもなんで昇さんは、三笠先輩が訪ねた時点でヤツになってたんだろ」
「ヤツって?」
「だから、炎恐怖症の奴。だって今の今まで殆ど姿見せなかったわけだろ? 一緒にいる加奈子さんや、しょっちゅう顔みせる三笠先輩が気付かないくらい」
「俺が思うに、炎恐怖症なのはやっぱり昇さん本人なんじゃないだろうか」
組んだ右足の先を見つめていた悠一が、徐に顔を上げた。
兄を覗き込むように、伸一は身を乗り出す。
「兄貴それってどういう意味? 」
「つまり奴の属性が『火』だ」
「ええっ?! てことは炎の精?」
「奴のネーミングがそんなソフトなニュアンスじゃ俺達が報われない」
「まあそうだよね。炎の魔神なんてどう?」
「うむ」
無表情で頷く悠一の様子に、吹き出すのを我慢する里子である。
「つまりだ。昇さんに取り憑いた炎の魔神は、その名の通り炎に強い。一方炎の魔神に憑かれた昇さんは、その副作用的反応で、炎恐怖症になった。精神のどこかが危険を察知して、拒否反応を起こしている」
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