3.超能力

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  3人の間に漂う沈黙の中。 生徒会室の黒板左上に設置されたスピーカーが、『ジー』と微かな音を立てた。 続いてすぐに、チャイムが鳴り響く。 4時45分。 どこかのクラスで行われている7限目終了のチャイムだ。 僅かに破られた静寂だったが、チャイムの余韻もそこそこに、北校舎の寂しさは度を増した。 やがて窓際で黙って思案に耽る兄に、伸一は意を決したかのように顔を向けた。 「なら兄貴。やっぱり俺達、昇さんのトラウマを取り除いて助けるべきじゃないかな」 「出来ればそうする。でも無理だ。それはお前が一番分かってるハズだろ」 「………」 伸一は再び黙り込むしかなかった。 兄貴の言う事は正しい。 確かに俺達の能力では、昇さんを救うのは不可能だ。 両手でわしわし頭を掻きむしると、焦げ茶色の髪の毛が乱れた。 その時、ふと里子が首を傾げた。 「ねえ。ちょっといい?」 「なんだ?」 「あの、今更な気もするけど、黒川くん達の能力って何? そもそもどうやって人のトラウマを解消するの? 私てっきり、カウンセラーみたいな事かと思ってたんだけど……」 確かに今更な質問である。 悠一は億劫そうに窓際から自分のパイプ椅子に戻り、弟に向かって顎で促した。 「お前説明しろ」 「おっ、俺ぇ!? なんで俺!?」 「年寄りに面倒な役を回すな」 「年寄りってあんた……」 都合よく僅かな年齢差を盾にしないでもらえます? 呆れて付け加える弟を無視して、悠一は吐き捨てる。 「つべこべ言わずに説明してやれ」 再び顎で促しながら、長い足を優雅に組んで背もたれにふんぞり返った。   
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