4.黒川兄弟

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  「まあとにかく、書斎には能力に関する本はなかったんだが」 「じゃあそれは?」 「親父の日記」 「嘘だろあの親父が日記?! ……想像つかない」 ポエムとか言わないでよ? 挿し絵とか入れてない? ガラステーブルに横たわったA5サイズほどの冊子を二度見し、勝手に何か想像して頭を振っている。 そんな弟に冷ややかな視線を投げ、悠一は腰に両手を当てた。 「まあ中身は、自分が受けた依頼の内容と成果が主なんだが、1つ気になるパターンがあってな」 「へえ。どんな?」 「『記憶喪失者の記憶喪失原因解消に成功』」 「 記憶がない人の過去に入ったって事?」 「喪失してるからな。親父の文によると、最も鮮明な記憶イメージをヒットさせる所は同じなんだが……」 「でも、記憶喪失者が何をイメージしたんだろ」 「それだ。どうやら親父は、彼女の潜在意識からヒットしたらしい」 「依頼人は女の人かあ。好みだったに違いないね……」 「その点は『黒いショートの髪が、爽やかな彼女のイメージにぴったりだ』とあるぞ。下手な小説みたいだな」 「ぶっ」 飲んでいたポカリのボトルに思わず息を吐く。 「何にせよ、親父にはそれが出来たわけだ」 「じゃあ俺達にも出来るんじゃないの?」 「まあな。試す価値はある。……が、問題が1つ」 「そうそう、相手が悪いよね。あの宇宙人じゃ、潜在意識ヒットさせる前に火だるま間違いなしっ」 大袈裟に両腕で自分を抱きかかえて、ブルブル悶えている。 「ま、それは三笠と相談だな」 「兄貴やる気満々だね~。さては三笠先輩のためを思っての下心炸裂とかいう……」 「期待に添えなくて残念だが、俺は今非常に危機感を抱いててな」 悠一はそう言って立ち上がると、一枚の紙切れをテーブルに投げた。 ヒラリ。 ヒラリ。 左右に揺れ、やがて父親の日記に寄り添うように着地した。  
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