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その翌日、放課後。
黒川兄弟はいつものように、三笠里子と生徒会室で密会していた。
昨日の『黒川家リビング会議』の結果を報告し、里子の意見を仰ぐためである。
幼なじみだという原田学を『利用』し、事前に伝言を頼んで呼び出した次第だ。
「昨日あれから両親に兄の話をしたの。そしたら、軽く笑い飛ばされた。昇にだって妹に会いたくない時もある、とか。加奈子さんの看病で大変だから疲れてるんだ、とか。ならあんた達、さっさと兄の様子見に行ってよ! って」
「言ったのか?」
「言いたかったなと」
「情けない」
悠一はもはや定位置化している自分のパイプ椅子にふんぞり返り、足を組み替えた。
「まあ、それなら除霊もクソもないな」
「親が頼りにならないとなれば、私がどうにかしなきゃ。なんかもうこうなったら、加奈子さんの体調不良は兄が原因なんじゃないかって思い始めたわよ」
「もうこの世にいないという可能性も加味せねば……」
「兄貴っ!」
「なんだ?」
勝手に人の言葉を切るな忌々しい。
真顔で呟きながら自分に鋭い眼光をくれる兄の神経を、伸一は毎度ながら疑いたくなる。
そんな呆れと共に自分を見つめる伸一を完全に無視して、悠一は顎で里子を指した。
「とにかく。お前はもう昇さんに関わるな」
「どうして?!」
「危なっかしい。いやむしろ邪魔だ」
「でもどうしたらいい?大魔神に取り憑かれてるのよ? このまま放置ってわけにいかないでしょう。 こうなったら恐山にでも行くしかない。イタコよ、イタコに依頼するのよ! 昇天させてやればいいのよ!」
『魔神』から『大魔神』へと進化を遂げた『三笠昇』は、まごうことなく里子の実兄だ。
様々突っ込みたい要素を敢えて放置し、伸一は兄の顔を窺った。
悠一が軽く頷くのを確認し、意を決した。
「その事で話があるんだ。三笠先輩」
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