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父親の請求書の下りをしっかり省くことを忘れず。
昨日のリビング会談の内容を、伸一は丁寧に説明した。
話を聞く自分の身が徐々に乗り出している事に、里子は全く気付かない。
パイプ椅子から滑り落ちかけて、ようやく座り直した。
「それってつまり、兄を助けてくれるって事?」
「まあそうなるな」
悠一が頷く。
「そこで問題なのが、昇さんの身柄確保だ」
「あ、そっか。私はもう大魔神に毛嫌いされてると思うけど」
「俺達だって無理だろ。こうなりゃ荒療治しかないわけだ」
「で、三笠先輩に許可を貰いに相談を」
「あと支払いに関してだな」
「許可も何も、頭下げてお願いするわ! それと支払いは、もともと兄の依頼だから、ちゃんと兄に払わせる! ……ところでおいくら?」
「1件成立10万」
「高いか安いか分からないわね……。でも、トラウマが解消される事で、人生180度変わるかも知れないし」
むしろ別世界への対価としては安いくらい?
里子が人差し指を唇に当てて唸る。
「ウチに本気で依頼して、10万を高いと言った人はいないよ。倍払ってくれた人もいるくらい」
「それでも親父の請求書の半分にも満たない」
「兄貴っ!!」
「何だやかましい。唾が飛んだぞ」
「……」
兄貴に友達が少ないのは、絶対に人格そのものが原因だっ。
弟が内心で非難しているのも知らず、顔をしかめて「しっしっ」と右手を振る兄である。
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