4.黒川兄弟

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    父親の請求書の下りをしっかり省くことを忘れず。 昨日のリビング会談の内容を、伸一は丁寧に説明した。 話を聞く自分の身が徐々に乗り出している事に、里子は全く気付かない。 パイプ椅子から滑り落ちかけて、ようやく座り直した。 「それってつまり、兄を助けてくれるって事?」 「まあそうなるな」 悠一が頷く。 「そこで問題なのが、昇さんの身柄確保だ」 「あ、そっか。私はもう大魔神に毛嫌いされてると思うけど」 「俺達だって無理だろ。こうなりゃ荒療治しかないわけだ」 「で、三笠先輩に許可を貰いに相談を」 「あと支払いに関してだな」 「許可も何も、頭下げてお願いするわ! それと支払いは、もともと兄の依頼だから、ちゃんと兄に払わせる! ……ところでおいくら?」 「1件成立10万」 「高いか安いか分からないわね……。でも、トラウマが解消される事で、人生180度変わるかも知れないし」 むしろ別世界への対価としては安いくらい? 里子が人差し指を唇に当てて唸る。 「ウチに本気で依頼して、10万を高いと言った人はいないよ。倍払ってくれた人もいるくらい」 「それでも親父の請求書の半分にも満たない」 「兄貴っ!!」 「何だやかましい。唾が飛んだぞ」 「……」 兄貴に友達が少ないのは、絶対に人格そのものが原因だっ。 弟が内心で非難しているのも知らず、顔をしかめて「しっしっ」と右手を振る兄である。  
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