4.黒川兄弟

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    人生いつ、何がきっかけで、どう急変するか分からない。 駅の掲示板に貼られた広告を見詰めながら、三笠里子はつくづくそう感じていた。 今までこんなに人を好きになった事はない。 そう思う相手に告白したのが、つい1週間と2日前。 同日、間髪入れずに見事玉砕。 それなのに今日、こうして彼を待っている自分がいる。 ……弟くんもいるけどね。 里子は広告から目を逸らし、のんびり正面を向いた。 今日も朝から必要以上に張り切る太陽。 遠くアスファルトの地面が揺れている。 そんな視界に、やたら目立つ2人組が映った。 真っ赤なTシャツに迷彩柄のカーゴパンツ。 白いプリントTシャツに濃紺のGパン。 足して350センチ超えを果たすであろう長身細身を並べて、黒川悠一と黒川伸一は、何やら熱心に会話しながら、真っ直ぐこちらに向かって来た。 周囲の目線が兄弟に集中する。 通行人が振り返る。 そんな反応など意にも介さず、兄弟は会話に夢中になっている。 里子は溜め息と共に苦笑いした。 この先私と黒川くんがどうにかなる確率なんて、半分もないもんね。 とにかく。 この件が終われば、黒川くんの性格からして、私は無視だろうし。 いっそのこと黒川伸一になりたい! そんな勝手な願いを天に向かって叫ぶ里子である。 「おい、来たぞ。さっさと連れて行け」 気が付くと目の前に2人が立っていた。 相変わらず無愛想でそっけなく、究極に横柄な物言いの悠一。 隣でそんな兄に侮蔑の眼差しを向ける弟。 なんて極端な兄弟なのかしら。 などとは言わず、里子は緩んだ頬を引き締めた。 「お願いします」 そう真顔で頭を下げると、今日の目的に気合いを入れ直す。 今から会いに行くのは、誰あろう自分の兄で。 しかし、兄ではない何者かで。 里子はキッと前方を見据え、陽射しのシャワーへとその身を投げ出した。  
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