第1話 1.黒川兄弟

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  「嘘だろっっ?! 兄貴ってばそれが高校男子のセリフ?! やっぱり異星人だ! 宇宙人は宇宙人同士で仲良くすればいいんだーっ!」 誰か宇宙船の手配を頼むー!! 付け加えた伸一の絶叫に、クラスメートの好奇の視線が集まった。 悠一は素早く振り返り、弟の頭をパシリと打ち鳴らす。 ドスの利いた低音でもって、弟の耳元を零下に晒した。 「黙れやかましい。いいか? 俺達の貧相な家計状況を鑑みろ。晩飯から姿を消して久しい肉の存在を憐れめ。他人に興味を示す暇があれば、血眼になって依頼を探せ。宇宙と交信している暇はない」 「依頼ばっかに頼らず他のアルバイト見つけりゃいいじゃん」 「この仕事を始めるきっかけを作ったのは誰だ?」 「……あ、それは俺です、間違いなく」 悠一の鋭い睨みに再び頭を垂れる。 相変わらず四方からの視線が身に染みるが、悠一はお構いなしの様子だ。 私立名山高校は、全国的に名の通った進学校である。 学生のアルバイトは禁止され、家の事情等例外の場合も、校長の許可が必要だ。 伸一は以前、自宅近所のコンビニでアルバイトをしていた。 たまたま客として担任がやって来た事。 たまたま許可なく無断でやっていた事。 この不運が重なり、黒川伸一のアルバイトは今後禁止となったのである。 「……もっと派手に客寄せしちゃうとか……」 「バレたら二の舞だろうが。俺達の仕事を教師に説明する事ほど無駄な時間はない」 「あははっ! そうだよね! やってる事普通じゃないし! ……あ。ならむしろバレてもいいんじゃない兄貴? 頭の痛い哀れな兄弟って事で始末されるよ?」 「一緒にするな忌々しい」 伸一の頭が奏でたパチーンという音色が、廊下から上がった声と重なった。 「おーい黒川ーーっっ!!」  
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