もう少し生きたかったよ

卵焼き

「ねぇ私あんたの手料理食べたい」

「料理なんてした事ないから無理」

「ねぇ私もうすぐ死ぬんだよ最後くらい我が儘聞いてよ」

「…医者は半年って言ったけどお前は死なねぇよ」

「ねぇもし本当に半年だったらどうすんの最後くらいやりたい事やりたいし食べた事ない美味しい物食べたいじゃない」

「…お前フォアグラ食べた事ないから食べたいって言ってたろ買ってきて食べさせてやるよ」

「嫌…あんたの手料理が食べたいの」

「お前フォアグラ美味いんだぞ…食った事ないけど」

「フォアグラはいいからあんたの手料理が食べたいの」

「…わかったよ何食いたいんだよ作ってくるから言ってみろ」

「まずは卵焼き」

「なんだよまずはって一回だけじゃないのかよ」

「誰が一回って言ったのよいいからまずは卵焼き作ってきて」

「わかったよ作ってきてやるよ」

次の日卵焼き作って持ってたよ俺

見た目はぐちゃぐちゃだったけど料理は見た目じゃなくて味だよ

あいつが卵焼き食った時どんな事言うかなんとなく分かってたよ
「まぁまぁかな」とか
「もっと美味しく作ってよ」とか言うと思ったのにあいつ笑顔で
「美味しいよ」って言ったんだ