なぎさの太陽

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一週間後。 一時間目から二人のクラスでは学級会が行われている。教卓には先生と翔太の姿があった。なぎさは、窓を向き、翔太と視線を合わせないようにしている。 「みんなも知っているだろうが、親の事情で岡谷は美知背小学校に転校する。よって、今日が岡谷がこのクラスに来る最後の日になる」 翔太は落ち着いた表情で、クラスの一人一人の顔を見つめた。 「(あいつとは、何度もサッカーでやりあったっけ……で、こいつは…)」 「岡谷」 「あ、はい」 「最後にみんなに一言言ってやれ」 岡谷が教卓の真ん中に立つ。クラス中の視線が自分に集中するのを感じる…一人を除いて。 「みんな。短い間でしたが、四年間ありがとうございました。突然のことで俺もまだ信じられないけど、こうしてみんなを前にして改めてみんなと別れるんだって思います」 クラスのあちこちから鼻をすする音が聞こえてくる。しかし、翔太はもちろん涙を流さず、声が震えることもなかった。 ただ一人だけを見つめしゃべり続けた。 ――たとえ視線を自分に向けられていなかったとしても。
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