なぎさの太陽

12/27
前へ
/27ページ
次へ
午後四時半。 なぎさが河川敷に向かうと、そこにはタンポポ以外の草をむしっている翔太の姿があった。 「こんなことしてていいの?今日引っ越すんじゃなかったっけ?」 「五時にここを出発するんだよ」 翔太が額の汗を袖で拭い、土手の上に上がってくる。 「今は怒ってないのか?」 「最初から怒ってないよ。なんか、自分の中で混乱してたみたい」 「そっか…」 二人で土手に座り込む。そして、下の河川敷を見つめる。 「少しだけタンポポが増えたね」 「ああ。でもこのペースじゃ、とても八年後には間に合わないかな」 「八年後って、大学生で結婚するの?」 「あ、そっか。そんな計算になっちゃうな」 「早すぎるよ」 二人が苦笑する。それから沈黙がしばらく続く。 「……私、諦めないよ」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加