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「え!?」
翔太がかなり驚く。それを見て、なぎさがにやける。
「やっぱり。このタンポポ計画止めようっていう話をしようとしたんでしょ」
「…当たり」
翔太が視線を下に落とす。
「だってよ、隣の隣町に引っ越すからここに来るには電車に乗らないといけないだろ。でも、俺の親は一人で電車に乗ること許してくれないし…後二年して中学入ったら部活始まるし、そしたら七時か八時ぐらいに家に帰ることになるから、俺、ほとんどここに来れなくなるだろ。そうなると、ここは有田さんに任せちまうことになる。こんな広いところを一人でやるのは無理だ」
「“あきらめんなよ。努力もしねえで無理だって言うのは逃げてるだけだぜ”」
翔太がすぐになぎさを直視する。なぎさが軽く笑う。
「確か、こう言っていつも私を勇気づけていたのは誰だったかなあ?」
「だ、だけどよ…」
「まだ私がいるよ。可能性はあるから、あきらめないでいこうよ」
翔太が一瞬顔を歪ませるがすぐ歯を食いしばる。
「分かった。じゃ、手伝える時は手伝いに行く。で、絶対有田さんを八年後に迎えに来るぜ」
「うん。でも八年後はまずいんじゃないかな?」
「おっとそうだった。もっと有田さんが大人になってくれないと」
「それ、どういう意味よ」
「色んな意味だよ。分かんねえのか?」
「あのねえー」
二人の笑い声が土手に響く。それは一週間ぶりの二人の心からの笑い声だった。
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