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「なぎさちゃん、お疲れ!よかったよ、今の試合!」
「ありがとう。でも負けちゃったけどね」
「いいって。次があるからさ」
「うん。(次か…)」
中学二年の秋。
浜賀地区新人卓球大会で、なぎさは二年レギュラーとして出場していた。
「(悔しいなあ…なんで勝てないんだろ)」
友人と別れた後、なぎさは溜息をついた。
二年になってようやく手に入れた、レギュラーとしての立場。
「(ここで勝たなくては周りから認められない、夏の地区予選の大会に出場することが難しくなるって分かっているのになあ…)」
重い足を無理やり進めながら応援席に向かう。応援席の入り口に入り、私の菫中学校の応援席は二階のベンチの…と思いつつ辺りを見回した時、ある人物がなぎさの目に入った。
「うそ…」
それは小学五年の時に土手で約束を交わした、あの色黒の男の子。
何年ぶりだろうか。
髪型は変わっていたが、なぎさにはすぐに分かった。
なぎさの鼓動が早くなり、体が熱くなる。ちゃんと顔を見たい、というそれだけの意思でなぎさの足は翔太のいるベンチに近づこうとした。
「翔太。あの子、お前を見てねえか?」
翔太の隣にいた翔太の友人、隼人が、翔太を突付く。
「は?誰が…(!)」
翔太が辺りを見回し、すぐに二人の目が合う。
「(気づいた!)」
なぎさは嬉しそうに手を振った。
しかし。
「隼人、行こう」
「え?」
翔太はなぎさの手に応えることなく、隣にいた隼人の手を引き、急いでその場を立ち去った。
「岡谷君!?なんで、」
なぎさは追いかけようとして足を止める。
溢れでそうな涙を止めるのに必死だった。
「(どうして…?)」
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