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翔太は隼人の手を引き、どこまでも走っていく。
まるでなぎさのいない世界を探すかのように。
「おい、翔太!あいつ、お前の知り合いだったんじゃねえのかよ!」
「……違う」
「嘘つけ!」
隼人は翔太の手を払い、足を止めた。翔太も足を止める。
「あの子、お前の名前を知ってたじゃねえか。あいつなんじゃねえのか、お前が小学校の頃に好きだったっていう子」
「昔の話だ。今はそんなつもりはねえよ」
「お前、まだ恋愛怖がっているのか。気にしすぎだ」
「違う!」
翔太が力強く答える。それを聞いて隼人が溜息をつき、自分の腕時計を見る。
「翔太、時間だ。もう戻らないとやばい」
「…分かってる」
翔太は振り返り、隼人と共にもと来た道を帰っていった。
「次の試合、よく見ておけ」
菫中学卓球部顧問が応援席のメンバーに言い渡す。
「先生、そんなに日向中学って強いんですか?」
「ああ。毎年この地区から全国大会に出場している学校だ。特に二年の岡谷のフォームがとても綺麗だ。お前たちの参考になる」
なぎさが反応する。
「(岡谷君、日向中学に入ったんだ…)」
顧問の言ったとおり、日向中学は男女共にとても強かった。
しかし。
「先生。今日の岡谷っていう選手、不調みたいですね」
「そうだな。だが、フォームは綺麗だろ」
「はい」
メンバーと顧問が翔太を見入っている。なぎさは辛くて見ていられなかった。
「(岡谷君、らしくないよ。どうしちゃったの…?)」
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