なぎさの太陽

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試合後、翔太は顧問に指導を受けた。 「岡谷。どうした、今日は体調が悪いのか?」 「いえ…すみません、先生。負けてしまいまして」 「いや、気にするな。今日の悔しさを明日に生かしていけばそれでいい」 「はい。ありがとうございます」 翔太が試合会場を出て行く。その入り口に隼人が立っていた。 「モロ影響されてんじゃん。あの子と何かあったのかよ」 「隼人…その話はもう口にするな」 翔太が応援席に向かう。隼人も大人しくその後に続いた。 「(俺に有田さんを好きになる資格なんてない…)」 それから、なぎさと翔太がその試合で出会うことは一度もなかった。 何ヶ月か過ぎて、3月の中旬。 次第に近づく夏の大会に向けて、各中学で必死で練習に取り組んでいた。 そんな中、菫中学では練習試合を行っていた。 相手はなんと日向中学。 菫中学の顧問はいい練習相手に恵まれたと喜んでいたが、翔太にとってはいい迷惑だった。 「…お互い、今日はいい試合にしましょう」 それぞれのキャプテンが試合前に一言述べる。 それから試合開始。 翔太は試合の合間になんとなくなぎさの姿を探していた。 しかし、彼女の姿は見当たらなかった。 「翔太。お前のお探しの女の子、どうやら今日は見学みたいだぞ」 「何のことだよ、隼人」 「いや…」 隼人が言い捨ててそのままトイレに向かう。翔太はその姿を見送った後、すぐに応援席の方を見る。 いた。 二人見学をしているようだったが、右側はどう見てもなぎさである。 「(なんで見学なんかしてんだよ)」 翔太は鼻を鳴らすと、自分もトイレに向かった。
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