なぎさの太陽

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休憩時間。 翔太と隼人は一緒に体育館裏で弁当を食べていた。 「こんにちは!」 菫中学の女子が二人に声をかける。 「あ、ども…」 「岡谷君だっけ。君、すごく強いよね。なんか、特別に練習してるの?」 「いや、ただ一日の練習を真面目にしてるだけ」 「へえー。それって、一回一回の練習を大切にしてるんだ。さすがだね!」 正直、翔太は一方的に盛り上がるこの彼女の存在が迷惑だった。すると、突然その子がまじまじと翔太の顔を見る。 「な、何?」 「…翔太君?翔太君だよね!ほら、私だよ!翔太君が転校する前にいた小学校で同じクラスだった!」 翔太が首を傾げるが、すぐにハッとする。 「大村…大村さんか!」 「きゃー、あまりに大人びちゃってて分からなかった。どおりで聞き覚えのある名字だと思った!髪形変えたねぇ」 「まあね」 二人の会話が盛り上がる。隼人は口をはさめず、なんとなく後ろを振り向きハッとする。そして、突然立ち上がる。 「なあ、君さ、ここのトイレの場所を教えてくれないか」 「いいよ。こっち、こっち!」 隼人が大村さんに手を引かれて連れて行かれる。 「翔太。ちょっと行って来るな」 「ああ」 隼人が手を振る。翔太は溜息をついて、弁当を片付け始めた。 「久しぶり。元気そうで良かった」 その声に翔太がすぐ後ろを振り返る。そこには制服を着たなぎさの姿があった。翔太の頬に汗が流れる。 「(隼人…はめたな…!)」
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