なぎさの太陽

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なぎさが翔太の横に座る。しばらく沈黙が続く。 「…お前、何で今日は見学なんだよ。体調管理も選手に必要なことだろ?」 苦しまぎれに翔太が出した言葉だった。 「レギュラーに選ばれなかったから…」 「え…」 翔太にとっては意外な返事だった。 「なんで?不調なのか?」 「違う…私、三月三十一日に大阪に引っ越すんだ。だから、次の大会には出れないの」 翔太の視線が落ちる。翔太は次に何をしゃべっていいのか分からなかった。 「こんな風に自分がなって、ようやく岡谷君の気持ちが分かった気がする」 「……」 「大阪ってここより都会だよね。大丈夫かな…」 「…なんとかなるんじゃね?都会って便利なんだろ?」 翔太はこの重苦しい雰囲気を消すために軽く答えた。 「そっか…」 なぎさの答えは重かった。どうやらもっと違う言葉を期待しているようだった。 「有田さん、俺に何が言いたいんだよ?」 翔太は、らしくないなぎさの態度にイライラし始めた。 翔太にはなぎさが何を期待しているのか分からない。 「いや、ちょっと相談したくて…」 「何だよ?」 「向こうで部活何しようかなって…」 「は?卓球やらねえのか?」 「それが、転校先の学校って卓球が強いんだよ。引っ越して、三年から入ってレギュラーになれるのかなって」 「俺に卓球で勝つんじゃなかったのか?」 「うん。でも、岡谷君に勝つためには全国大会までには行かなきゃ駄目じゃん。だけど自信無くて…」 「だったら別の部活に入れば?」 その一言を聞いて、なぎさが翔太を直視した。 なぎさの表情は愕然としていた。
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