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「ありえねえ。有田さんって本当に女かよ?」
「うるさいなあ」
「はいはい、二人共落ち着いて」
先生が苦笑しながら、睨み合う二人を手で落ち着くよう仕草を出す。
「それじゃあ、なぎさちゃんが終わったみたいだから二人で仲良く見せ合いっこしてね」
「はーい」
ぶっきらぼうに二人が返事をする。先生が軽く笑ってその場から離れると、一斉に二人が身構える。
「じゃーんけーんぽんっ!」
何度かあいこが続く。そして…
「げえっ、俺かよ!」
翔太が悲鳴を挙げる。それに対してなぎさが得意そうな顔をする。
「じゃ、見せてよ。はーやーくー」
「急かすなよ、お前」
しぶしぶ翔太が画用紙を広げる。机の上に広がったその一枚の絵には体操服を着ている男の子が描かれていた。男の子は両手に丸いものを持っている。
「これが岡谷くんのゆめ?この人、何持っているの?」
「卓球のラケットと玉。おれは絶対卓球選手になって有名になるんだ。…見て分かんないのかよ」
「分からないよ。だってこの玉とラケット、どっちも同じ大きさだもん」
「しょうがねえだろ。クレヨンだと小さく描こうとしても大きくなっちまうんだよ」
「岡谷君がへたっぴなだけじゃん」
「うるせえな。だったらお前は上手く描けたのかよ」
「ふふ~ん。見て驚くな…じゃーん!」
翔太の前になぎさが画用紙を広げる。翔太が顔をしかめる。
「うわ、だっせえ…なんだよこの馬鹿でかいスカートはいた女」
「ウエディングドレスを着ているの!」
「ふーん。じゃ、周りの黄色い丸は何描いてんだ?」
「タンポポだよ。私ね、将来いっぱいのタンポポがあるところで結婚式するんだ!」
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