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「結婚?これお前しか描かれてないじゃん」
「だって、まだ誰が私と結婚してくれるか分からないもん」
「でもこれじゃ結婚式じゃねえじゃん。じゃ、おれが相手になってやるよ」
「えっ、」
翔太がすぐに黒のクレヨンを手にする。そして棒人間を殴り書きする。
「あ…ありがと」
なぎさは心なしか体が熱くなるのを感じた。
「…でも、すごくてきとうな人間だね、この人」
「仕方ねえじゃん。俺、人なんて描けねえもん」
「…出来るかな?」
「あ?何が」
「結婚式のこと。こんな風にたくさんのタンポポが咲いている場所なんてないじゃん」
「じゃ、作ればいいじゃん。河川敷なら出来るんじゃね?」
「かせんじき?」
「川と土手の間の広場のこと」
「あったっけ、そんなところ?」
翔太が呆れた顔をする。
「しらねえの?…じゃ、今日一緒に帰ろうぜ。連れて行ってやるよ」
「うん!」
「うーん、いい計画立てているみたいだけど、五時までには家に帰るようにね」
翔太となぎさが驚いて後ろを見る。先生が腰を低くしてにっこり笑っていた。
「先生、盗み聞きしちゃいけないんだよ!」
「あら、なぎさちゃん怒った?ごめんね」
「先生、気にしなくていいよ。こいつ短気なだけだし」
「なんですって!」
なぎさが拳を振り上げる。
「ほら」
先生と翔太が笑う。なぎさ、ハッとして赤くなる。
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