第一話 防空壕

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自分が心底情けなかった。 彼等はきっと私達、兵士が守ってくれると思っていたはずだ。 それがなんてざまだ…彼の目の前にいるのは兵士などではない、ただの逃亡兵だ。 それでも彼は、私にありがとうと言ってくれた。 その言葉が私に火をつけた。 「どこへ行くんですか、外は危険です!」 彼は出口に向かう私を呼び止める。 「今からでも遅くはありません!まだ生きてる人がいるかもしれない。助けに行ってきます」 そう言って防空壕を飛び出す。 安心させるため、すぐ戻ってきますと言おうと振り向く。 雲に隠れていた月の明かりが防空壕の中を淡(あわ)く照らす。 ───背筋が凍る 恐怖のあまり体がまるで固まったかのように凍りつく 防空壕の中には誰もいなかった あるのはたくさんの人骨だった そして穴から彼が語りかける ──もうすこしだったのに── そのとき山の斜面に爆弾が落ちる。 脆い造りだったのか、防空壕は崩れて土に埋まった。
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