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自分が心底情けなかった。
彼等はきっと私達、兵士が守ってくれると思っていたはずだ。
それがなんてざまだ…彼の目の前にいるのは兵士などではない、ただの逃亡兵だ。
それでも彼は、私にありがとうと言ってくれた。
その言葉が私に火をつけた。
「どこへ行くんですか、外は危険です!」
彼は出口に向かう私を呼び止める。
「今からでも遅くはありません!まだ生きてる人がいるかもしれない。助けに行ってきます」
そう言って防空壕を飛び出す。
安心させるため、すぐ戻ってきますと言おうと振り向く。
雲に隠れていた月の明かりが防空壕の中を淡(あわ)く照らす。
───背筋が凍る
恐怖のあまり体がまるで固まったかのように凍りつく
防空壕の中には誰もいなかった
あるのはたくさんの人骨だった
そして穴から彼が語りかける
──もうすこしだったのに──
そのとき山の斜面に爆弾が落ちる。
脆い造りだったのか、防空壕は崩れて土に埋まった。
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