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棟の中はいつものように薄暗く静かだ。
例の牢の前に立つ。
少し前までここには死体があった。
そう思うだけで酷い吐き気に襲われる。
頭をブンブンと振り、覚悟を決めて牢に入る。
空気はひどく冷たい。季節が冬ということもあってか、まるで冷凍庫の中にいるようだ。
牢の中は真四角。
左奥にトイレ、右端にベッドとシンプルな配置がされている。
ベッドに寝転ぶ。
あまりの寒さに毛布を持って来ればよかったと後悔する。
寒さのあまり、丸まっているといつの間にか私は眠りについていた。
『………ない』
何か声がする。
『わた……………てない』
声はだんだん大きくなってくる。
『わたしは……………てない』
不意に声が止まる。
なんだ、夢か…。
再び眠りに身を任せようとした。
すると耳元で
『わたしはやってない!!!!』
驚き目を開ける。
体を起こし周りを見渡す。
───誰もいない。
安堵の息を漏らし再びベッドに仰向けに寝転ぶ。
小さな窓から外を見る。
まるでゴンドラのような形の月が輝いていた。
下弦の月だ。
「───キレイな月だな」
ふと口走っていた。
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