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自殺した彼もあの時、月を見たんだなぁ。
だが、はっと気付いた。
牢の窓には鉄格子が填(は)まっている。
つまり、月がこんなに綺麗な形で見えるはずが無い。
月が見えたとしても、鉄格子のせいで途切れ途切れに見えるはずなのだ。
では、今私が見ているあの“月”はナンダ?
「───あ」
──月が上下に開く。
──アレは
──口だ
カクカクと首が小刻みに揺れている。
目は穴が開いてるかのように真ん丸な黒。
口からは歯茎がむき出しになっている。
「…あ…あ…」
息ができない。
体が動かない。
目を瞑ってしまいたいが何故か見開かれたままだ。
──手だけが動く。
気がついたら私は自分の首を絞めていた。
力を込める。
その時、牢が勢いよく開いた。
そこに立っていたのは局長だった。
「止めろ!そいつは関係無い!」
「きょ…局長…」
そこで私の意識は途絶えた───
翌朝、私は何ごとも無かったかのように牢の中で目を覚ました。
その日から、局長は行方不明になった。
局長はあのナニかと関係があったのだろうか。
局長がいなくなった今となっては、もう真実を知ることが出来ない。
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