第二話 月

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自殺した彼もあの時、月を見たんだなぁ。 だが、はっと気付いた。 牢の窓には鉄格子が填(は)まっている。 つまり、月がこんなに綺麗な形で見えるはずが無い。 月が見えたとしても、鉄格子のせいで途切れ途切れに見えるはずなのだ。 では、今私が見ているあの“月”はナンダ? 「───あ」 ──月が上下に開く。 ──アレは ──口だ カクカクと首が小刻みに揺れている。 目は穴が開いてるかのように真ん丸な黒。 口からは歯茎がむき出しになっている。 「…あ…あ…」 息ができない。 体が動かない。 目を瞑ってしまいたいが何故か見開かれたままだ。 ──手だけが動く。 気がついたら私は自分の首を絞めていた。 力を込める。 その時、牢が勢いよく開いた。 そこに立っていたのは局長だった。 「止めろ!そいつは関係無い!」 「きょ…局長…」 そこで私の意識は途絶えた─── 翌朝、私は何ごとも無かったかのように牢の中で目を覚ました。 その日から、局長は行方不明になった。 局長はあのナニかと関係があったのだろうか。 局長がいなくなった今となっては、もう真実を知ることが出来ない。
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