第三話 いっしょ

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トラックがすごいスピードで迫って来てた。 時が止まったように思考はスロー。 直感で、『あぁ、死ぬなぁ』って思った。 ドン! 背中に衝撃が走る。 そのまま前に突き飛ばされる。 倒れながらも意識はあった。 激しい痛みは特に無く、背中が少し痛むだけ。 (私の体って丈夫だなぁ) なんて思う。 なにやら周りに人だかりが出来てきた。 そりゃそうか。 猛スピードのトラックに轢かれて無傷なんて誰も信じないだろう。 しかし私に近寄る人はいなく、まるで私なんか事故とは関係無いように人々は通り過ぎていく。 「…?」 ムクリと起き上がる。 やっぱりどこにも怪我はない。 背後ではトラック周辺を囲んでなにやら人だかりが出来ている。 野次馬達を掻き分け円の中心を見る。 そこには倒れている男性と運転手らしき男性が一人ぽつんと突っ立っていた。 「誰か!早く救急車に電話しろ!」 野次馬の中からサラリーマン風な男性が叫ぶ。 しかし、倒れている男性からは夥(おびただ)しい血が円を描いて広がっている。 そこでようやく、私は助けてもらったんだと認識する。 男性に駆け寄る。 その顔を見て絶句した。 「あぁ………」 倒れていたのは、この二年間私をストーカーしていた男の人だった。
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