第三話 いっしょ

4/15
前へ
/50ページ
次へ
彼は虚ろな瞳で私を見、ただ一言呟いた。 「─よか──った」 その時、背後から救急隊員が私の肩を後ろへ引っ張った。 「下がって!あとは任せて下さい!」 あまりのことで、救急車が来ていたことに気が付かなかった。 「彼は助かりますか!?助かりますか!?」 背後から、処置をしている救急隊員に必死に問い掛ける。 「……最善は尽くします」 その顔色が、彼は助からないと告げていた。 「あなたは身内の方ですか?」 どうやら心配する私を身内かなにかと勘違いしたらしい。 「えっ…あの…」 彼は私のストーカーです、なんて言える訳ない。 本当は助けてもらったと言いたかったが、この時の私は酷く混乱していた。 「いや、…あの…関係はありません…」 「じゃ下がって下さい!」 野次馬の中に押し戻される。 その背後に、彼が担架に乗せられ救急車に担ぎ込まれる姿が見えた。 救急車が去ったあと、トラックの運転手は警察官と共にパトカーに乗って連行された。 業務上過失致死というやつになるのかな。 事故現場には、まだたくさんの野次馬がいる。 あることないこと、事故の情報が人々の間に行き交っている。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1357人が本棚に入れています
本棚に追加