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道路に残った大量の血痕が、事故の壮絶さを物語っていた。
「うっ……」
何か酷く嘔吐感がする。
それは悲惨な光景を見たからではなく、真実を言えなかった自らの過ちからくるものだった。
事故現場をあとにし駅へ向かう。
とりあえず早く家に帰りたかった。
家に着き自分の部屋に戻る。
何もする気が起きない…。
私はベッドに蹲(うずくま)って入り布団を被った。
母の晩ご飯の知らせで目が覚めた。
下に降りて食卓に着く。
目の前に母が作った料理が並んでいるが食べる気がしない…。
「全然食べないけど…どこか悪いの?」
母が私に心配そうに尋ねる。
「ううん、大丈夫だよ…」
箸をすすめる。
私を見ていた父が、ふと思い出したように言う。
「そういえば、今日学校の近くで事故があったらしいなぁ」
心臓が跳ね上がる。
「あら…事故に遭った方、大丈夫かしら?」
何か心の奥から罪悪感と吐き気が同時に沸き上がるのを感じる。
「私…ちょっと気分が悪いから部屋に戻るね…」
徐(おもむろ)に立ち上がりヨロヨロとした足取りで部屋に戻る。
下から母の心配する声が聞こえたが、返事をする気力も無くベッドに顔を埋(うず)める。
私は襲ってくる睡魔に身を任した───
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