第三話 いっしょ

5/15
前へ
/50ページ
次へ
道路に残った大量の血痕が、事故の壮絶さを物語っていた。 「うっ……」 何か酷く嘔吐感がする。 それは悲惨な光景を見たからではなく、真実を言えなかった自らの過ちからくるものだった。 事故現場をあとにし駅へ向かう。 とりあえず早く家に帰りたかった。 家に着き自分の部屋に戻る。 何もする気が起きない…。 私はベッドに蹲(うずくま)って入り布団を被った。 母の晩ご飯の知らせで目が覚めた。 下に降りて食卓に着く。 目の前に母が作った料理が並んでいるが食べる気がしない…。 「全然食べないけど…どこか悪いの?」 母が私に心配そうに尋ねる。 「ううん、大丈夫だよ…」 箸をすすめる。 私を見ていた父が、ふと思い出したように言う。 「そういえば、今日学校の近くで事故があったらしいなぁ」 心臓が跳ね上がる。 「あら…事故に遭った方、大丈夫かしら?」 何か心の奥から罪悪感と吐き気が同時に沸き上がるのを感じる。 「私…ちょっと気分が悪いから部屋に戻るね…」 徐(おもむろ)に立ち上がりヨロヨロとした足取りで部屋に戻る。 下から母の心配する声が聞こえたが、返事をする気力も無くベッドに顔を埋(うず)める。 私は襲ってくる睡魔に身を任した───
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1357人が本棚に入れています
本棚に追加