第三話 いっしょ

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次の日、午前に身体検査を済ませた私は特にすることもなくベッドに寝転びながら読書をしていた。 患者と患者の間にはカーテンが掛けられており、同じ部屋にいるのに顔がわからないという状況だ。 プライベートを重要視する病院も今では珍しくない。 にしても暇だ。 知らない人と話すのには少々気が引けるが、私は隣りの患者に喋り掛けることにした。 「あの…初めまして。二、三日入院することになりました。同じ病室ですし、短い間だけどよろしくお願いします。 あ、それと昨日は夜分に五月蠅(うるさ)かったですよね。すみませんでした」 話題はなんでもよかった。 丁度、挨拶がてら昨日のことで謝罪もできる。 「こちらこそよろしく。 それと、そんな気にすることないですよ。俺はぐっすり寝てたし、夜遅くに患者が担ぎ込まれるのもよくある事だし」 良かった。 どうやら良い人そうだ。 「入院して長いんですか?」 どうも口振りからして病院には長いような気がした。 聞いてから失礼な質問だと気付く。 「はは、えらくハッキリ言う人ですね」 声色からは不機嫌さは感じられない。 むしろ褒められてる方に入る。
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